【開催レポート】『小中高大アントレ交流イベント〜手触り感のある体験が学びと社会をつなぐ〜』にて小中高教員が実践を発表(2026年1月26日)

2026年1月26日、千葉ペリエホールにて、千葉大学アントレプレナーシップセンター主催『小中高大アントレ交流イベント〜手触り感のある体験が学びと社会をつなぐ〜』を開催しました。
本イベントは、小学校から高校までの教員や教育関係者、ならびに地域企業の担当者も集い、アントレプレナーシップ教育の実践を共有し合うことを目的とした交流の場です。
当日は対面参加者47名、オンライン参加者10名、合計57名の方にご参加いただきました。
アントレプレナーシップ教育の実践者や関心を持つ方々が一同に集い、実践を起点にこれからの教育のあり方を考える一日となりました。
他者にとっての価値を生み出す力を育む「アントレプレナーシップ教育」

まずは千葉大学教育学部学部長の藤川大祐教授から、開会挨拶と共にアントレプレナーシップ教育の基本的な考え方についての講演がありました。
アントレプレナーシップ教育は、「起業家を育成するための教育」と捉えられがちであるが、その本質は「機会やアイデアをもとに行動し、他者にとっての価値を生み出す力を育むこと」にある。
また、事業を成功させることや利益を上げることではなく、児童生徒自身が課題を見つけ、考え、行動し、その結果を振り返るというプロセスを経験することが重要であると語られました。
とくに小中高の段階では、児童生徒自らの関心や身の回りの課題に向き合い、行動へ踏み出す力を育てていくことの重要性が強調されました。
学校だけに閉ざさず、地域との「連携」を意識したアントレプレナーシップ教育の設計
藤川大祐教授の開会挨拶ののち、実際に、アントレプレナーシップ教育を実践されてきた小中高の先生による実践事例が共有されました。
地域や社会と接続するかたちで設計されたアントレプレナーシップ教育の実践事例が紹介されました。
各校の取り組みでは、「連携」を単なる協力関係にとどめるのではなく、学びのプロセスそのものに組み込んでいる点が共通しており、それぞれに異なる工夫が見られました。

【柏市立土小学校の井上先生】
「さつまいも」を題材にアントレプレナーシップを活用した探究学習の実践が共有されました。
学校に配置されている地域コーディネーターと連携し、探究の過程で実際にその分野の専門家と出会う機会を意図的に設計すること、教員同士、また児童同士が対話を重ねながら答えを探していくなかで、児童の意識が変化する瞬間が見られたことが報告されました。

【千葉市立椿森中学校の岡先生】
職場体験で終わらせるのではなく、体験先へ課題解決案を提案する活動まで含めた事例が発表されました。また、学年が上がってからは地域のお祭りへの出展という実践の場を設けることで、生徒が社会に触れながら学びを深める構造がつくられていました。
単年度ではなく3年間で取り組むことを見据えた設計であり、企業との連携があったからこそ実現した実践であることが共有されました。

【千葉県立特別支援学校市川大野高等学園の清水先生】
企業と連携し、校内コンビニの設置から運営までに取り組んだ実践について紹介されました。
「どうしたら売れるのか」を考える過程で、「それは元々あったみんなを笑顔にしたいというコンセプトと違うのではないか」「もっとこうしたら運営がうまくいくのではないか」というそもそもの大切にしたかった価値についての意見が生徒から出た場面も語られ、教員が生徒を信じて任せる姿勢が学びを深めていることが印象的でした。

【千葉県立佐倉南高校の伊藤先生】
アルバイトなどで既に社会と接点をもつ生徒たちにとっての「社会との出会い直し」を意識した取り組みが紹介されました。「健康まちづくりプロジェクト」において、企業と連携するなかで、生徒の意見を一貫して「面白い」と受け止める大人の存在が、生徒の自己肯定感を育む重要な要素になっていることが語られました。
これらの事例はいずれも、地域や企業との関係性を通して、アントレプレナーシップ教育をより実感を伴う学びへと深めていく可能性を示すものでした。
問いと学びをつなげることで児童生徒の主体性と思考力を育む

実践者プレゼンを受け、千葉大学アントレプレナーシップセンター事業統括の片桐大輔教授と、千葉大学教育学部学部長の藤川大祐教授お二人でのトークを中心とした基調セッションへ。
実践をされてきた先生の共通するキーワードは「連携」。学校内だけで学習を閉じることなく、地域・企業・大学などの外部との連携を意識したアントレプレナーシップ教育プログラムであると、気づきの共有がありました。

また学年単位で完結しがちな探究学習を、3年間という少し長いスパンを見据えて設計することで、単発の成功体験で終わらせるだけでなく、問いを次の学びへとつなげていく児童生徒自身の「主体性」や思考の深まりが促されることが指摘されました。
基調セッションの最後に片桐教授から、当日紹介された4つの実践事例を踏まえ、参加者に持ち帰ってほしい視点として3点が示されました。
1点目は「連携」です。一時的な協力関係ではなく、地域に開かれた、持続可能な連携・コラボレーションであることが重要であると強調されました。
2点目は「リソース」です。他地域の成功事例をそのまま導入するのではなく、自分たち自身や学校、地域が持つリソースをどう生かすかを考えることが大切であると述べられました。
3点目は「オーダーメイド型の授業」です。これは容易ではないものの、少人数に時間をかけて向き合う学びの在り方は、21世紀の教育においてますます重要になるとして、考え続けてほしいテーマとして提示されました。
価値を生み出すために、児童・⽣徒が動き出すためには

実践者プレゼンおよび基調セッションを受け、グループディスカッションへと移りました。全てのグループに、アントレプレナーシップ教育を実践されてきた先生が一人ずつ入り、密な議論を少人数で行いました。各グループに入っていただいた実践経験のある先生には、実践者プレゼンで発表した4名の先生に加え、3名の先生にもご協力いただきました。

各グループ共通の問いは「どのようなリソース(資源)を教員や児童・⽣徒が揃えることで、地域社会における価値創出に向けて動き出したのか」。
実践をされている先生方が実際に学校で行われている授業実践の事例を共有しつつ、参加者は意見や問いを付箋へと書いていきました。

各テーブルには、大学の先生、企業、行政など、小中高の先生にとどまらず、多様な立場の人による相互交流の場所へと自然に変化していきました。「価値創造に向けて自分の立場で何ができるか?」を活発に議論がなされた形跡を感じるような言葉が付箋に書かれていました。
活発な意見交換の後には、参加者同士が名刺を交わしながら次の連携に向けた話を進める姿が多く見られました。
オンラインにて参加いただいた方は、片桐教授と藤川教授の基調セッションの続きを。実践者プレゼンを受けた質問に対し、片桐教授、藤川教授の視点も入れながら質問への回答がなされました。

「実践はどこまで設計し、どこから流れに任せているのか」
「価値づくりにフレームワークは使っているのか」
「新規事業開発と似ている点はあるのか」
「卒業後の社会をどう見据えながら探究学習を設計しているのか」
「異動後、実践は引き継がれるのか」
探究学習は、教科書や定型のカリキュラムがなく、教員が企画する点では、企業との在り方と共通する一方、売上や成果ではなく、生徒の変化や学びの過程そのものを価値とする点が大きく異なると説明されました。学校教育における「価値」は「児童、生徒が楽しく探究学習へ向かうことにある」と示されました。
また、フレームワークはあくまで補助的に用い、まず行動と試行錯誤を重視する姿勢が重要であること、起業体験に限らず「他者のための価値創造」を軸とした実践がアントレ教育の核心であることが示されました。
教員の異動による実践の断絶という課題に対しては、地域との連携を深めることが持続可能な学校文化につながるとされました。さらに、教員自身が業務改善にアントレプレナー的発想で取り組むことが、生徒へのアントレ教育と働き方改革を両立させる鍵になるとの見解が示されました。
現場で実践を作られる先生方、また企業の方からの質問に丁寧に応えてくださいました。
学びづらさを抱える児童生徒に、つながるきっかけを生み出すアントレプレナーシップ教育

千葉県教育庁の細川教育次長より総括として、「アントレプレナーシップ教育が、学びづらさを抱える児童生徒にとっても学校に来る意味や学びのきっかけを生み出す可能性がある」「地域や大学との連携を通じた実践を、県全体へ広げていくことへの期待と、教員を支える伴走的支援の重要性」についてコメントを頂戴しました。
これらの実践を通じて、アントレプレナーシップ教育が、児童・生徒の学校生活と学校教育の包摂性を高める可能性があることを、改めて示されました。

また、片桐大輔教授は閉会挨拶で、アントレプレナーシップ教育や探究学習は完成されたモデルを導入するものではなく、各学校や地域の状況に応じて試行錯誤を重ねながら形づくられていく取り組みであると述べられました。
大学は理論を示すだけでなく、現場の悩みや課題に寄り添い、ともに考えながら実践を支える存在でありたいとも語られています。また、児童生徒の時間は限られており、教育は「待ったなし」であるとして、本日の学びを各現場での次の一歩につなげてほしいと呼びかけ、挨拶を締めくりました。
参加者の声
イベントに参加いただいた方々より、さまざまな声をいただきました。

「アントレプレナーシップ教育が一部の先進的な学校だけの取り組みではなく、県全体の教育の中で位置づけていく可能性を感じた」「学びづらさを抱える子どもにとっても、学校に来る意味や学び直しのきっかけになり得る点は非常に重要だと思う」「現場の実践と大学の伴走がセットになっている点は、今後の施策を考える上でも参考になる」(行政関係者)

「実践の話を聞いて、アントレプレナーシップ教育が「特別なこと」ではなく、身近なテーマから始められるものだと分かった。」「自分たちが小学生に伝える立場になるからこそ、学校の外の人たちとつながることが大切だと感じる。今日の話を聞いて、実際にプログラムを進めるイメージが具体的になったと思う」(プログラム計画・実行中の高校生)

「発表することで、これまで取り組んできた実践を振り返る良い機会になった。アントレプレナーシップ教育は、教員だけで完結させるのが難しい部分も多いが、大学という機関がハブとなることで、外部の専門家や企業とつないでもらえることが大きな支えとなっている。」「千葉大学アントレセンターとの関係性があることで、実践を「続けていく」ための視点を持てていると感じている。」(実践者プレゼンに参加された先生)
千葉大学アントレプレナーシップセンターは、実践や手触り感のあるアントレプレナーシップ教育の設計を学校現場に寄り添いながら、ともに考え、伴走支援を行ってまいります。
地域や企業など、学校外の多様な主体との連携を重視した取り組みをご検討いただいているみなさま、取り組みに関するご相談はお気軽にご相談ください。
