学生が香取市佐原企業企業の課題に挑んだ6日間のビジネス実践の記録
千葉大学アントレプレナーシップセンターは、2025年11月6日~12月8日にかけて「佐原ビジネス実践プログラム」を集中講義として開催しました。
本プログラムは、香取市佐原を舞台に「佐原の町をさらに活性化させ、㈱NIPPONIA SAWARAの新規事業として収益を上げるためのビジネスプランを考えて実践せよ」というミッションに取り組む、実践型の授業です。
座学だけでなく、現地でのインタビュー、事業計画の策定、1日限定のビジネス実践、収支計算までを一気通貫で行った学部生4名と大学院生1名からなる混合チームの6日間の軌跡をご報告します。

Day1:11月6日(木) キックオフ・課題設定 @千葉大学
初日となるこの日は、千葉大学西千葉キャンパスにてキックオフを実施。これから挑む佐原というフィールドを深く知るため、香取市の地域事業者等による講演とグループワークを行いました。
午前中は、香取市の伊藤友則市長、地域おこし協力隊の橋本紗良様、株式会社㈱NIPPONIA SAWARAの代表取締役古屋 秀様にご登壇いただきました。
伊藤市長からは「香取市のポテンシャルと未来への期待」、橋本様からは「佐原で見つける新しいキャリア」、NIPPONIA様からは「佐原における観光活性化事業~㈱NIPPONIA SAWARAの取り組み~」についてインプットをいただきました。
学生たちはメモを取りながら、真剣な眼差しで「香取市佐原の特色」に耳を傾けていました。


午後のグループワークでは、講演で得た情報から佐原地域や㈱NIPPONIA SAWARAの「課題」や「可能性」を整理し、事業課題の設定に挑みました。
当初は緊張した面持ちだった学生たちも、ブレインストーミングが進むにつれて打ち解け、「特産物や歴史的資源」という可能性の一方で、「情報発信力不足」や「半日型観光」「少額消費」といった課題を整理しました。 議論の末、学生たちは「1日の活動で効果検証が可能であること」を重視し、チームで取り組む事業課題を「観光客の滞在時間の短さ(半日型観光からの脱却)」に設定。
その後、この事業課題を深堀りし、顧客の真のニーズを明らかにするためのインタビュー計画を策定しました。


Day2:11月23日(日) 課題発見・インタビュー @佐原
23日の午前中は、現地での突撃インタビューを実施しました。 学生たちは佐原駅前のイベント「さわらふるさとフェスタ」と小野川周辺の2チームに分かれ、観光客や住民、事業者にヒアリングを行いました。
学生たちは、見ず知らずの人に声をかけることにそれほど戸惑いもなく積極的に挑戦していました。
「どこに行ったらいいかわからない」という観光客の生の声や、「お店はたくさんあるが夕方に閉まることが多い」という事業者の悩みに触れ、ネット検索では得られない肌感覚を掴んでいきました。


午後は株式会社㈱NIPPONIA SAWARAの古屋代表取締役に、同社が管理する分散型ホテルやさわら町屋館等を案内していただき、事業の背景や利用者層について学びました。
その後、さわら町並み交流館でのグループワークでは、インタビューと見学の結果を共有。
「ふらっと来た観光客向けのクーポン付きマップ」や「家族層・カップル向けのアドベンチャーマップ」など、具体的なアイデアの種が生まれ始めました。夜はHOSTEL Co-EDOに宿泊し、観光客目線で佐原の朝と夜を体感しました。


Day3:11月24日(月・祝) 企画深化・フィールドワーク @佐原
24日の午前中は、事業アイデアの実現可能性を模索するため佐原の町を自由に散策しました。
ここでチームは大きな壁にぶつかります。町を歩いたところ、当初考案していた「クーポン付きマップ」では、「既存の企画に埋もれてしまう」「収益モデルが弱い」という厳しい現実に直面。
「これではビジネスとして成立しないのではないか?」――学生たちの表情に焦りの色が浮かびます。
しかし、そこで諦めずに「佐原ならではの独自性とは何か?」を徹底的に議論しました。
その結果、佐原の偉人・伊能忠敬に着目。「観光客自身が測量体験を通して未完成の佐原地図を完成させながら、各店舗に立ち寄ってクイズを解き、クーポンをもらう」という体験型コンテンツ「佐原ちずづくり」へと企画を大きく方向転換させました。
ターゲットも「高齢者」や「家族連れ」に絞り込み、実際に小野川沿いを歩いて測量ポイントを確認するなど、実践に向けた詳細な動線設計を行いました。

Day4:11月25日(火) 事業計画策定・メンタリング @佐原
いよいよ実践日に向けた最終準備です。
この日は、金融機関のプロフェッショナルである佐原信用金庫 大坪 弘明様、京葉銀行 大森 達矢様をメンターに迎え、アイデアを「実現可能なビジネスプラン」へと落とし込む作業を行いました。
午前中は、ビジネスモデルの構築です。
「観光客を回遊させる」という価値に対し、顧客からは「体験料」を、マップ掲載事業者からは「広告料」をいただくモデルを決定。
プロからのなげかけに戸惑いながらも、しっかりと食らいつき、論理を組み立てていきました。
午後は、仮想収支計画の策定です。 今回の1日限定ビジネスでは、顧客から金銭を受領せず、「いくらなら購入するか」をヒアリングする「仮想価格調査モデル」を採用します。
学生は、必要な経費や、マップ・広告枠の仮想価格を算出。「クイズの難易度は適切か?」「マップのデザインはどうするか?」といったクリエイティブな作業と並行して、クーポン利用時の精算フローや店舗連携の仕組みなど、ビジネスの実装に必要な裏側の仕組みづくりにも奔走しました。

Day5:11月29日(土) ビジネス実践日 @佐原
ついに迎えたビジネス実践日。さわら町屋館を拠点に、企画した1日限定イベント「佐原ちずづくり~伊能忠敬の町を歩こう~」を実施しました。
この企画は、「佐原に来てもどこに行けばよいか分からない」という課題を解決するため、観光客が伊能忠敬のように歩測体験をしながら街を巡るツアーです。
学生たちは、設営準備の後、寒空の下、通りを行き交う人々に必死に声をかけ、呼び込みを行いました。
何度も断られ、心が折れそうになる場面もありましたが、それでも笑顔でパンフレットを配り続けました。


その甲斐あって、子ども連れの家族やカップル等が参加。
「楽しかった」「面白かった」という声をいただいた時、学生たちの顔には安堵と達成感が広がりました。
自分たちが考えたサービスの価値が、お客様に伝わった瞬間でした。同時に、集客の難しさやオペレーションの課題など、やってみて初めて分かる商売のリアリティーを肌で感じた一日となりました。


Day6:12月8日(月) 最終発表会・収支報告 @千葉大学
午前中は、Day5の実践結果を数字で振り返る「収支計算・予実分析」を実施。 実際に集めた「顧客や事業者の希望価格」と「実質経費」を照らし合わせ、「なぜ黒字になったのか」「KPIは達成したか」等を徹底的に分析しました。

午後の最終発表会では、香取市、佐原信用金庫、京葉銀行、㈱NIPPONIA SAWARA、香取市地域おこし協力隊、そして大学関係者を前にプレゼンテーションを行いました。
学生チームは、「滞在時間を2時間から6時間に伸ばす」という目標に対し、「佐原ちずづくり」がどのような効果をもたらしたか、定量・定性の両面から堂々と報告。さらに、実践を通じて見えた改善案や、NIPPONIAへの提言を発表しました。
発表後、ゲストの皆様からは、「地域資源である伊能忠敬を体験価値に変えた着眼点」や「短期間で高いクオリティのマップを制作しやり遂げたこと」を高く評価いただくと同時に、ビジネスとして継続させるための鋭いアドバイスもいただき、学生にとって大きな成長の機会となりました。

学生からは「メンバーがそれぞれの強みを生かしあったことでビジネスの実践までたどり着くことができた」との感想が聞かれました。
また、「計画通りにいかない難しさを体感したが、地域をより深く知ることができ、地域に関わる仕事への関心が強まった」という声も上がり、確かな成長が感じられました。

おわりに
本プログラムを通じて、学生たちは教室を飛び出し、香取市佐原という地域で泥臭くビジネスを行う経験をしました。
ご協力いただいた香取市の皆様、企業の皆様、誠にありがとうございました。千葉大学アントレプレナーシップセンターは、今後も「実践」を通じた人材育成に取り組んでまいります。

関連リンク
【募集終了】佐原ビジネス実践プログラム(2025年11月~12月)
